「過去の栄光」という呪縛

「これ食べる!」と言って用意させたものを結局食べないのって、子どもあるあるなのか、それとも発達障害のせいなのか、どうなんでしょうかね……。
私は子育てというものを息子たちでしか経験していないので、息子たちの奔放さ、身勝手さ(としか感じられない)が障害由来なのか、それとも強烈な個性なのかわからず、正直、接し方にもかなり迷いがあります。大好きな名鉄電車の車両タイプについてはマニアックなほどよく覚えるのに、「つけた電気を消す」「出した物はしまう」がいつまでたってもできないのはなぜだ。
まあ、娘しか育ててない母も息子たちの特殊性には気付かなかったので、案外「子どもあるある」なのかもしれない。


ところで、数年前まで「東宝のアニメ映画御三家」としてコナン、ドラえもんに並ぶコンテンツだったのが「ポケモン映画」でした。
古参コナンファンとしても、最新作を見に行くと大抵ジブリとポケモンの予告が流れて「あ、またやるのか」と思ったもんです(ポケモンに関しては毎年のシリーズだったんで、流れるのが当たり前だったんですが)。あと妙に記憶に残ってるのが「海猿」の予告だったりする。何でだろう。
 
ポケモン映画、気付けば2020年の「ココ」を最後に公開されなくなっており、事実上の打ち切りとなっています
私はゲーム機のない家に育ったので、幼い頃からゲームというものにほとんど縁がなく(コナンのゲームだけは、友だちからプレイヤーを借りてやったことがありますが)、当然ポケモンのゲームは全く遊んだことがありません。
ただ、アニメに関しては、子どもの頃はよく見ていました。映画を映画館に観に行ったことはなかったものの、地上波放送されたらそれなりに見ていました。特にミュウツー、セレビィ、ラティアスとラティオスはよく覚えています(なぜかルギアとエンテイは記憶にない……何でだろう)。
 
最近まで映画の興行収入というものを気にしていなかったので、20年も前に「ミュウツーの逆襲」が72億も稼いでいたことにびっくりしたんですが(笑)。
映画打ち切りは、公式から終了を発表されたわけでもなく、その理由についてもいろいろ推測されています。その中で有力なのが「興行収入の落ち込み」です。
ミュウツーの「72億」というデビュー記録が頂点であり、そこから多少の上下はあるものの、年々下がり続け、最終作となった「ココ」では20億円とのことでした。この「ココ」、どうやら観に行ったファンの方からの評判はかなりいいようで、「こんな素晴らしい映画がたった20億だなんて信じられない」と嘆くファンの方のブログも見つけました。
 
まあ、「興行収入は必ずしも映画の質を保証しない」というのは、コナンファンならば誰もがわかっていることだと思います。映画の人気ランキングで上位に来るのは大抵、興行収入の奮わなかった初期の作品だし。特に、「たった11億」だった第1作の「時計じかけの摩天楼」を駄作だと言うファンはほぼいません。
とはいえ、一般的には「数字が奮わない=人気がない」という評価になってしまうんですよね。
 
ところで、私は知りませんでしたが、ポケモン映画では「最後に次回作の告知がある」という恒例スタイルがあったそうで(ここで「コナンと同じだな」と思ってしまう私の思考回路よ)。しかし、「ココ」の時にはそれがなかったそうです。
これを単純に受け止めると、「ココ」の公開時点で、既に「ココの興行収入の多寡に関わらず、映画はこれで終わり」という方針だった、と考えられます。あるいは「ココ」がよほど当たれば継続のつもりで企画自体はあったものの、可能性が低いので公表はしていなかった、かもしれない。
そして、その前作であった「ミュウツーの逆襲EVOLUTION」が29.8億円だったということに、私はなんだかせつなくなってしまいました。
 
一般的にアニメ映画で20億といえば、十分に「ヒット」と呼べる数字です。それを遥かに超える、約30億を稼ぎだした「ミュウツーの逆襲EVOLUTION」によって、ポケモン映画の打ち切りがほぼ決まってしまったとすれば、とても世知辛い話です。(もしかしたら、「EVOLUTION」を3DCG作品として作ったことで制作費がかさみ、例年より余裕がなくなったのかもしれませんが。)
それが「決定的な落ち目」という印象になってしまったのは、間違いなく1作目の「ミュウツーの逆襲」が72億も稼いでしまったからでしょう。それは、ポケモン製作陣にとって、どうしても「過去の栄光」として意識せざるを得ない存在になってしまったのではないでしょうか。
 
私は人生の大半をコナンと共に歩んできた人間なので、どうしてもコナンを基準にものを考えてしまいます。興行収入を気にし始めた時点で、コナンの歴代興行収入もきっちり調べました。上にも書いたように、コナン映画のデビュー作であり、「大ヒットしたから続編製作が決定した」「時計じかけの摩天楼」は興行収入11億円です。ポケモンが打ち切られたと思われる「ミュウツーの逆襲EVOLUTION」の約1/3、実際に最終作となった「ココ」の約半分です。1997年の11億と2020年の20億では状況が違う、という見方もありますが、さすがに「時代の違い」で片付けられる差額じゃないでしょう(それ言ったら、興行収入の歴代ランキングも年代別にしなきゃいけなくなります)。
 
さらに、実はコナン映画、「数字が奮わないからもう打ち切ろうか」という話があったそうです。その話自体の元データは見つけられませんでしたが、似たニュアンスで書かれている記事を見つけたので貼ります。
劇場版「名探偵コナン」はなぜヒットを連発できるのか?原作と映画の幸せな関係
この中に、こんなくだりがあります。

今でこそ順調に見えるが、一時は危機感もあった。
特に10作目前後の危機感は強く、放送開始時は小中学生だったファンの年齢も上がっていく中で、ストーリーもマンネリ化し、どう企画を立てていくか迷ったという。

この頃には「ブームも去り、コナン映画も潮時か」という空気があったようです(私は全く気付いてませんでしたが。笑)
この頃の興行収入は、
9作目→「水平線上の陰謀」→21億円。
10作目「探偵たちの鎮魂歌」→30億円(これは10周年記念としてかなり宣伝されていた)。
11作目「紺碧の棺」→25億円。
当時、コナン映画としても「34億円を稼いだ」「ベイカー街の亡霊」という記録がありました。これもまた、この当時としては「過去の栄光」だったでしょう。
しかし、そこでポケモン映画は打ち切りとなり、コナン映画は継続となった。その分水嶺は何だったのか、と考えると、やはりポケモンが「かつては72億稼いだ」という事実だったのではないかと。対外的にも、「11億で始まったシリーズが34億を頂点として現在21億」なら「伸び悩んでるね」という程度の印象で済みますが、「72億で始まったシリーズがスタートを頂点として現在30億」だったら「めちゃくちゃ落ちぶれたじゃん……」という印象になってしまう。
 
ポケモン製作陣も、初期のうちは「72億」が「また挑戦できる目標」であったと思います。しかし、年々数字が下がっていき、もう同程度にはヒットさせられない、と悟った時、その「輝かしい記録」は「呪縛」に変わってしまったんじゃないかな、と思いました。そうなると、50億や40億という「一般的には十分に大ヒット」という数字ですら、歯がゆいものになってしまったんじゃないか。これは製作陣だけでなく、ファンもですね。
逆にコナンは、伸び悩んでいたとはいえ、現在20億で目標が「過去の34億」だったら「頑張れば届く、いや超えてやる」とも思えるでしょう。ファンとしても「また頑張ればいけるよ」と応援していきやすい。
 
とはいえ、これは全て私の想像と推測にすぎませんし、映画の事実上の打ち切りには他に公式関係者の事情があったのかもしれません。ただ、数字に満足していた(コスパ的にもモチベーション的にも)なら20作以上続いたシリーズをいきなり終了させる必要はないので、近年の映画の数字が関係者にとって満足のいくものではなかったことは間違いないでしょう。
過去のifを語っても仕方ないことではありますが、もしも「ミュウツーの逆襲」が72億も稼ぐことがなければ、ポケモン映画は今も続いていた可能性があるのかな、と少し思いました。
 
似たようなことは、他作品でも起こっています。デビュー作が78億円という大ヒットをした後、55億、32億、と落ち込んでいって、ついに映画自体製作されなくなった(というか、コンテンツ自体終わったんですかね?)「妖怪ウォッチ」。55億も32億も十分立派な数字なのに、78億という「過去の栄光」のせいで「落ち込み」の印象がすごい。(2023年にも一応公開されていたと今調べて初めて知りました。トータル8作あるそうです)
 
今年はあの「鬼滅の刃」の新作映画が公開されるようですが、こちらはまあ……「400億」が再現できると思ってる人は関係者含め誰もいないと思うので(笑)、そこそこの数字で安定するかもしれませんね。(私は「鬼滅」は全然合わなくて、原作2巻くらい、アニメ2話くらいで離脱しましたが)
来月のコナン新作については、私としては「数字自体はいくらでもいいけど、また歴代記録を塗り替えたり、日本初の快挙を成し遂げてくれたら嬉しいな」という気持ちです。

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