「ベイカー街の亡霊」を久しぶりに見た結果

昨日の記事、「なんか話がとっ散らかってたな……」と、ちょっと恥ずかしくなっております。
言いたかったことは「キッドの変装相手として基本的には新一が1番便利だけど、『獲物の真贋』という要素を加えれば、また事情が変わって、物語を十分に面白くできる余地がある」ということでした。ただ、キッド登場エピソードをいろいろ見返してみたら他にもいろいろバリエーションがあったので、「こんなのもあった、あんなのもあった」と書き出してみたら、なんか要領を得ない文章になっちゃった、という話でした(笑)。
 
ところで、我が家は光テレビに入っているので時々「アニマックス」とか見れるんですが(大体は週末しか見ませんけど)。昨日、「日テレプラス」をつけてみたら「ベイカー街の亡霊」がやってたので、久々に見てました。公開から20年たった今でも評価の高い作品ですが、私は「コナンらしさ」を感じられず、あまり好きません。
というか、久々に見て真っ先に出てきた感想が「説教くせぇ……」でした。序盤から始まる世襲批判、学校教育への批判、犯人に「血統や世間の目と戦え」という優作の説教。
「こんな説教くさい作品を、コナン歴代最高傑作と絶賛する人がいるのはなぜだろう?」とちょっと考えて、思い当たる節がありました。今年の「黒鉄の魚影」です。劇中に「人種差別」という言葉がはっきり出てきて、「人種を越えた世界平和」なんていう壮大なテーマがぶち上げられます。その脚本を書いた櫻井武晴さんは現在、推理小説家の大倉崇裕さんと並んでコナン映画の脚本を担っており、元々が「相棒」シリーズで有名な、社会派刑事ドラマの脚本をずっと書いてきた方です。
 
これは私の肌感覚ですが、「ベイカー街の亡霊」は公開からしばらく、ストレートに絶賛する声と「完成度は高いが『コナン』ではない」という声が拮抗しているような状況でした。それが、ここ数年は絶賛意見しか見なくなり、「コナンシリーズで歴代最高作品」だと評する人まで出るようになりました。その理由が近年の櫻井脚本作品なのではないか?と思ったのです。
つまり、「社会問題を作品に取り込む」櫻井さんの脚本によるコナン映画が増えたことによって、観客から「コナン映画に現実の社会問題を入れ込む」というスタンスへの抵抗がなくなったのではないか?と思うのです。その結果、同じように世襲制や風評被害という問題を取り入れた「ベイカー街の亡霊」への評価が高まった……というか、「ベイカー街の亡霊」を「コナン作品として堂々と評価していい」という風潮ができたのではないか?と思います。
 
元々、コナン映画にはメッセージ性が含まれた作品がいくつかあります。「水平線上の陰謀」では「お互い傷つけあったりすることのないよう、相手を思いやる心を持とう」とか、「沈黙の15分」での「言葉は刃物」は今でも名言として取り上げられています(個人的には、劇中の描写とその名言がそぐわないので微妙なんですが)。
ただ、これらはあくまで「大人が子どもに言い聞かせるようなメッセージ」であり、だから「コナン作品」に元々含まれている「人を殺してはいけない、傷つけてはいけない」と同じように「ターゲットである子どもたちへの教訓」として抵抗なく受け入れられてきたのではないか、と思います。
対して、世襲制の問題や風評被害、差別問題などは「まずは大人が気にする問題」です。有力者・権力者に気を遣うのも、血統を気にするのも大人です。子どもたちは、そんな大人の空気感を感じ取って相手への態度を変えるに過ぎません。
個人的には、映画というものは娯楽作品であってほしいし、こと「コナン映画」においては、メッセージ性を持たせるにしてもそれは「子どもたちへの普遍的なメッセージであってほしい」と思うのですが……。
 
と、作品外の状況についてちょっと考えてみたついでに、久しぶりに見たからこそ疑問に思った「ベイカー街の亡霊」の内容への疑問点を挙げてみたいと思います。
 
・ヒロキ君は、なぜモラン大佐に喧嘩をふっかけたのか。
劇中でコナンは、ホームズの宿敵であるモリアーティ教授の腹心の部下であるモラン大佐と対決します。そのきっかけとなったのは、舞台となったトランプクラブに探検仲間となった諸星君が乱入したせいでした。
この場面の時点で、諸星君は「権力者の親に甘やかされて育った傲慢な少年」だったので、自分の力と手に入れた武器(銃)を過信したせい、として不自然さはありませんでした。しかし、この諸星君が「この事態を引き起こしたヒロキ君ことノアズアークが成り代わっていた存在」だと、ラストで明かされます。ここで疑問が。
ノアズアークは、何を思ってモランに喧嘩を売ったのか。
この乱入が原因でクラブ内で乱闘が起こり、コナンの仲間である歩美、光彦、元太の3人が一気にゲームオーバーになります。元々、「怪我をしたらゲームオーバーになる」という設定があった中で、悪の親玉の腹心とその取り巻きが集まるクラブで騒ぎを起こせば、そりゃ最低何人かはゲームオーバーになりますよ。コナン自身、乱闘の中で「このままじゃ全員ゲームオーバーだ!」と焦っていますし、諸星君が持ち込んだ銃がモランに取られた時点でもう万事休すでしょう。コナンが天才少年で、場数も踏んでいて(笑)機転が利いたから切り抜けられただけの話で、あのまま全員ゲームオーバーになっていてもまったく不思議ではなかった。
そのどこまでを、ノアズアークは計算して仕組んでいたのか。
コナンの頭脳を見込んで「他のステージは恐らく全滅になる、頼みは彼だ」と思っていたのなら、わざわざ乱闘騒ぎを起こしてコナンの仲間を減らす必要はなかったんじゃないか。彼の狙いをコナンは「親の力を頼りにすることなく壁を乗り越え、ゲームを通じて成長するオレたちを君は期待したんだろう?」と語っていますが、だったら真っ先にゲームオーバーにするべきは、頭脳も度胸も兼ね備えすぎたコナンなんじゃないかと思わんでもない……コナンの万能さはその辺の権力者のコネよりすごいと思う(笑)。
終盤の暴走列車の中で、このままでは駅に突っ込むしかない列車を止める術も、自分たちが列車から降りる術もなくしたコナンは絶望しますが、そこでノアズアークは「お助けキャラ」としてシャーロック・ホームズを登場させます。
(個人的には、あそこで自分を含む50人の命を諦めることはコナンのキャラ崩壊だと思いますが、それはまた別の話)
それをコナンはノアズアークに「君は非情になれなかった」と評していますが、私としては「トランプクラブでのやらかしは十分非情だろ」と思いました……。
 
そして、物語にアイリーン・アドラーが登場するくだりで思った。
・モリアーティ教授は、なぜアイリーンを狙ったのか?
私も、かつてシャーロック・ホームズシリーズを一通り読みました。コナン界におけるホームズの威光が半端ない。参照。
その中でアイリーンが登場する「ボヘミアの醜聞」も読みましたが、この映画で言われた「ホームズがアイリーンを(恋愛的な意味で)愛した」とは思えませんでした。私の印象では、ホームズはアイリーンを「私の追跡を振り切るとは、大した人だ!」とその知性と機転に惚れ込んだ、という感じでした。しかもこの映画、勝手にアイリーンを離婚させ、「自分が死んだらホームズさんがどれくらい悲しんでくれるのか見たい」とアイリーンに言わせているんですよね……Wikipediaで調べてみたら、ホームズとアイリーンの子どもを創り出している作家さんまでいましたが、これも似たようなもんだな。
 
で、本題です。
シャーロック・ホームズシリーズは「ホームズの友人であるワトソンが書いた」という体裁だから、当たり前のように「ホームズが特別視するアイリーン」の存在を認識してますが、それをモリアーティ教授が知ってたらおかしくないか?一応、対外的にホームズにとってのアイリーンの存在がわかりそうな事実として「ホームズはボヘミア国王からの報酬として、アイリーンの写真を希望した」というのがありますが。モリアーティ教授がホームズを調べていたとしても、それだけでアイリーンに目を付けるか?ホームズの元には、日々様々な悩みや問題を抱えた依頼人が訪ねてくるのに。
奇しくも劇中で「モリアーティ教授がホームズと直接対決して死ぬのがこの3年後」と明言してます。アイリーンのネタをここで使わず、あと3年寝かせておけば、モリアーティ教授はホームズに対して優位に事を進め、滝で対決しなくてもホームズを葬り去れたんじゃなかろうか……(笑)。
と、ここまで考えて、出た結論が「このバーチャルロンドンは優作が考えた世界なので、ホームズがアイリーンを特別視しているのは当たり前ってことでいいや」でした。シャーロキアンがホームズの世界を作ったら、そりゃアイリーンは特別で当たり前になりますわな。なんか、突き詰めて考えたら負けな気がしてきた。
 

あとは、一緒に見てた旦那が終盤の展開を見て「これ、貨物車でワインに揉まれてる間に、コナン君たち樽にぶつかって絶対怪我してるよね。ゲームオーバーでしょ」とツッコミ入れてました(笑)。確か前に見た別の感想では「ワインの量が多すぎる」というツッコミもあったような気がします。

まあ、どこまでリアリティを追求するかっていうのは、アニメ映画としては微妙な問題ですね。以前紹介した「コナンに興味のない推理作家」の方も、動画の中で「ただの優れたミステリーなら実写でやればいい、アニメには、アニメならではの荒唐無稽さが必要」と評していました。私が大好きな「瞳の中の暗殺者」も「ハロウィンの花嫁」も、現実的なツッコミを入れようと思えばいくらでも入れられますしね。
 
長くなってしまいましたが、半端に映画の内容を書いてるので、かなり読みにくいと思います……(汗)。
台風で天気がえらいことになりそうです。お気を付けください。

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