翻訳の面白さ、難しさ

世代は変わったな……と、最近とても思います。
夏に登校付き添い中、長男の同級生の子と話していて、
「おばさんは小学生の頃、どんな色のランドセルを使ってたか覚えてる?」
「どんな色もなにも、昔はランドセルの色は決まってて、男子は黒、女子は赤しかなかったよ」
「え!?」
「それに、昔は今ほど夏も暑くなかったから、夏はリュックに切り替える必要もなかったよ」
「え!?」
「ついでに、登下校に日傘も要らなかったよ」
「え!?」
といった会話になっていました。ジェネレーションギャップをめちゃくちゃ感じるわー。
というか、私が結婚した10年ほど前には、まだ真夏でも保冷枕と扇風機で一晩寝ていた記憶がありますよ……。今じゃ、夏場は24時間、エアコンで冷房つけっぱなしですけどね。


ところで、現在、YouTubeのアメリカ公式は「銀翼の奇術師」を配信しております。
以前からコナン映画でも空気と化してるアレについての雑学的語り  偏りまくったコナンのテーマソング・挿入歌語り で度々触れていますが、私はこの映画がかなり気に入っています。私はランキングとかは作らない主義ですが、もし作ることがあったら、結構上位に来ると思います。
 
ただ、本来これは地域ロックされており、日本からは見られないようになっています。私はVPNサービスの契約をしているので見られるんですが、どうも「配信側の意向として見られないようにしている」ものを抜け穴的な手法で見るのは「著作権の侵害」に当たる可能性があり、法的には微妙なラインらしく、私もこれまで「見た、見ている」とは明言しないように書いてきました。
 
しかし、今回この配信されている字幕の翻訳がかなり興味深かったので、あえて触れようと思います。
「銀翼の奇術師」は……というか「異次元の狙撃手」以前の作品は、英語吹き替えの収録がされていないようで、全て字幕翻訳で配信されています。あまり英語が堪能ではない私のような者には、かなりありがたく、ついでに「日本語に合わせた秒数のセリフに調整されていない(可能性が高い)」ということで、限りなく日本語のニュアンスに近い、そのままの訳で表示されるので、とても勉強になっています。
 
その中で、とても面白い訳がありました。これがどこのシーンだかおわかりでしょうか。

ちなみに、これは配信シーンではなく、手持ちのBlu-rayの該当シーンです。「見た」と書くだけでも法的に危なそうなので、さらに画面をそのまま撮影する勇気はありませんでした(汗)。
 
話を戻しますと、これはキッドが新庄に変装していると突き止めた直後、とぼける新庄ことキッドに「バーロ、とぼけんじゃねぇ」と言い返すシーンです。
この「バーロ、とぼけんじゃねぇ」のセリフが、英語字幕では「Oh come one,let's cut to the chase.」なのです。
前半については「バーロ」の意訳でしょうが……正直「come one」だと「さあ来い」になってしまうので、「oh come on」で「おいおい」といったニュアンスにするはずが、誤字になったのではないかと思います。
 
問題はその後です。
「let's cut to the chase」って全然「とぼける」感ないな、と思って調べてみたら、「cut to the chase」で「本題に入る・要点を話す・単刀直入に言う」といった意味の慣用句でした。元々映画業界の用語で、「(クライマックスである)チェイスのシーンに早く移れ」といった言い回しが転じて、このような意味になったらしいです。「Cut to the chase」の意味と使い方とは?例文を使って解説 | じゅんぺいの英語学習奮闘記より。
 
これ、すごく面白いと思ったんですよね。
変装していることを誤魔化そうとするキッドに対して「とぼけるな」というコナンのセリフが、翻訳によって英語圏のファンには「(余計な会話をさせるなよ、)さっさと本題に移ろうぜ」というセリフとして発信されているのです。
 
この配信での翻訳は自動翻訳ではないかという声が、コメント欄にも結構ありまして。実際、コナンの重要な代名詞である「silver bullet」が「silver bread」になったりしたこともあるようで「何で弾丸がパンになってるんだよ」といったツッコミが、過去の配信で入ったりしていたのですが。
こんな大胆な意訳が入っていることを考えると、あながち「自動翻訳だろう」とも言えないな、と思います。
 
この少し後のシーンでも、ちょっと気になる翻訳がありました。
着陸直前に落雷にあった飛行機ですが、私はてっきり「雷」から「thunder」だと思ってたんです。
しかし、実際のセリフは「雷が落ちたんだ!」は「We've been struck by lightning!」でした。調べてみたら「lightning」が「稲妻」の意味で、「え、じゃあthunderとlightningの使い分けって何!?」と思ったら、「thunder」「lightning」「thunderbolt」の意味と違い|英語で「雷が落ちる」は何と言う? – 1から英会話力・語彙力UPを目指すによると、「thunder」は「雷鳴」、つまり雷の音を指し、「lightning」が「雷光、稲妻」を指す……そうです。
 
しかし、興味深いのは、これだけじゃありません。
飛行機に落雷があったと気付いたセリフ「雷が落ちたんだ」については「We've been struck by lightning!」だったコナンのセリフが、その後の管制に対しての「雷が落ちて画面がみんな消えちまった!」については「We've been hit by lightning and our monitors are all out!」になっていたんです。
日本語の同じ「雷が落ちる」という表現に対し、英語が「struck by lightning」と「hit by lightning」で変わっているのは不思議なものです。一応「strike」と「hit」の違いについても調べてみましたが、なにせ同じ現象、同じ日本語表現についての英語表現の使い分けなので、さすがに納得できる解説はないでしょう。
 
あと面白かったのが、コナンが「自分が副操縦士席に座っている」と自己申告した後の嶋岡機長の「坊や、操縦桿や他のスイッチを絶対触っちゃダメだよ!」が「Don't touch anything,understand?」になり、「操縦桿や他のスイッチ」は丸々略されて「何も触るな」になっていたことです。しかも、その後の「いいね?」が改めて「understand?」と訳されているので、「understand?」が繰り返される、ものすごく念入りな念押しセリフになっていました。
 
しかし、残念な訳もありました。序盤のコナンとキッドの空中チェイスの直前のシーンです。
「恋人が夕飯作って待ってるからな」のキッドのセリフが「Your girlfriend's fixed dinner and she's waiting for you.」になっていました。つまり、最初から「お前の恋人がお前の夕飯を作って待っている」と明言しているセリフになっていたんです。
まあ、キッドはこのセリフの直後に蘭の声で「夕飯できたよ」と声をかけているので、翻訳担当者が「コナンの恋人」と訳してしまっても仕方ない気はするのですが……、
ここでのキッドは、蘭の声を突然出すことでコナンを動揺させ、隙を作っていることを考えると「誰の恋人が、誰の夕飯を作って、誰を待っているのか」を明言してしまっては、セリフの効果が半減してしまうと思うんですよね。日本語だと主語を略すのはよくあることなので、「誰の」なのかを曖昧にしたセリフを言えたのですが……これはちょっと残念だな、と思いました。
せめて、主語を「the parson」とかにできなかったかなーと、遠い空の下で一人で思っております。
 
こうした主語や目的語の訳で残念だな、と思った字幕が、他にもありました。
こちら、「緋色の弾丸」の英語圏での予告なんですが。


この中で「私はまだ、あの子に会うわけにはいかない」という、日本でも公開前、公開当時にファンの間で「誰のことだ?」と話題になったセリフがあります。
その字幕が「I can't meet that girl yet」なんです。
「あの子」が誰のことなのかは、結局結論が出ていないと思うのですが、選択肢としては直前までバトルしていた沖矢昴こと赤井、もしくは現在進行形で同じ空間にいつつも、ついに対面しなかったコナンです。
どちらにしても「girl」ではない……。
この「girl」は、どこから出てきたんでしょうかね。ある意味、これも主語や目的語をよく略す日本語ならではの表現に、翻訳担当者が振り回された結果なのかもしれません。いや、マジで誰を想定して訳を「girl」にしたんだろうか……?
 
YouTubeのアメリカ公式は、次は「ハロウィンの花嫁」の吹き替え版を配信することを既に発表しています。
3年前の今頃、私は「ハロウィンの花嫁」のハロウィン再上映をわくわくしながら待っていました。そして、直前に長男が熱を出し、その看病のために初日鑑賞を泣く泣く諦めたのも、今ではいい思い出です(笑)。
 
そして、来月に入れば、いよいよ来年の映画のタイトルやティザービジュアルが解禁されるでしょう。今度の映画は神奈川県が舞台になることがわかっていますので、今度こそは映画の上映期間中に聖地巡礼できることを祈っています。今年は結局、長野駅に数時間滞在(?)したのみとなりました(まだギリギリキャンペーン期間中だったので、キャラパネルは残っていたのが幸いでした)……。

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