命がけの復活・再開

なんか、中国での「コナン」の炎上がなかなか終わりませんね。
一応、「コナン」の現地公式が「ただの周年記念企画で、悪気はない」と声明を発表したようです。「名探偵コナン」の中国仲介業者、「中国侮辱アニメ」とのコラボめぐり声明―中国メディア
そりゃそうでしょ、去年の「隻眼の残像」は中国だけで80億円売り上げたという話もありますし、そんな中国ファンに、公式が喧嘩を売るようなことを意識的にするはずがありません。
 
私は「僕のヒーローアカデミア」についてはまったく知らないので、過去に中国で炎上していたことも知らなかったのですが、その理由は、かつて日本軍が中国で人体実験?で使った「マルタ」という用語をキャラクターにつけたから、だそうな。
……うん、日本語に「丸太」って言葉が普通にあるし、それでなくても「~太」は日本の男性によくある名前なので、これは運が悪かったとしか言いようがないな……。


ところで、続・吹き替え感想 を途中で放り出してしまっていたので、ここで続けたいと思います。
先日は「コナンたちが洞窟から脱出した」シーンで終わっていたと思いますので、その後の病院のシーンから始めます。
 
まず気になったのが、ここです。こちらは日本語の原作25巻より。

この小五郎の「おい、お前どうして……」が吹き替えでは「Same blood type? How do you know?」になっていました。
ここ、ちょっと残念だなーと思いました。
原作では「お前どうして」の時点で蘭が話を遮っているため、問いは完成していません。なので蘭が答えなくてもおかしくないし、コナンの容態が危険な状態だから「そんなことより」と話を強制終了しても、さほど不自然ではありません。
ここ、原作の英語版も確認してみましたが、「Hey…How do you know…」で終わっているので、同じ状態になっています。
しかし今度の吹き替えでは、小五郎が「Same blood type? How do you know?(同じ血液型だとなぜ知ってるんだ?)」という問いを完成してしまっているため、質問に答えず強引に話を押し切る蘭が、少々不自然な形になってしまったように思えます。
 
続いて「コナンに銃口を向ける」というきわどい冗談の後の灰原のセリフ。
「あなたにクギを刺しに来たのよ」というセリフが「I came to put the final nail in the coffin.」となっていました。nailは「爪」ではなく「釘」だそうです。coffinは棺桶。
なんか棺桶出てきたよ……?
一応「釘を刺す」と同様の意味の英語熟語を調べてみましたが、基本的に「warn(警告する)」や「remind(念を押す)」という単語を使うようです。英語原作でもこうなっていました。

「This is a warning.(これは警告よ)」。うん、原作の翻訳は冷静だった。
試しに「final nail in the coffin」で検索してみたら、「棺桶に最後の釘を刺す=トドメを刺す」という意味が出てきました。
「トドメを刺す」……ではないな。もしかして翻訳担当者さん、「釘を刺す」を「トドメを刺す」だと思って訳しちゃった……?
ただ、Google翻訳でも、「釘を刺す」だと「Drive in the nail」ですが、「釘を刺しに来た」だと「I came to put a nail in the coffin」と「coffin」が足されちゃってるので、これは「釘」という単語に対する認識の問題もありそうな気がします。
 
ちなみに、「釘を刺す」の語源も調べてみました。釘を刺す/くぎをさす – 語源由来辞典によれば、古来より日本の木造建築では木材の固定を「パーツを特殊な形に加工して、お互いはめ込むことで固定する」という工法でされていたのが、念のため釘で固定するようになったことから「念を押す」という意味の「釘を刺す」という言葉が生まれたそうです。
 
あと、これは翻訳の指摘ではないのですが、この後の
「彼女って蘭のことかよ?」が「When you say that girl,you're referring to Ran?(お前があの女子と言った時、お前は蘭を指したのか?)」という、なんだかすごく遠回しな表現だったのは、セリフの秒数の関係かしら。この英文を日本語に再翻訳してみると「あの女の子って、蘭のことですか?」となり、さらに英語に再翻訳すると「Is that girl Ran?」となりました(笑)。再翻訳だけで単語の数が半分以下になったぞ。
 
続いて、学園祭の場面……ではなく、その学園祭についての会話について、ちょっと触れます。
「あの体育館の空調は壊れていて、上演中サウナ状態で、去年のお客さんの入りが悪かった」
ものすごく時代を感じるわ。まず、「上演中サウナ状態になる」時期に学園祭や運動会をやる学校は、もうあまりないでしょうね。
大体、学園祭(私の母校では体育祭・文化祭と言ってました)や運動会の時期は、昔は「夏休み明けの9月」が定番でした。しかし、もう残暑が厳しくて、別の時期に移した学校が多いと思います。うちの息子たちの小学校でも、数年前から11月になっています。
体育のプール授業だって、「7月は水温が高すぎる」として6月と9月に分散しているのに、それでも「水温が高いので当日中止」とかザラですからね。
もっと言えば、登下校もそうです。うちは校区でも端っこなので、通学には片道徒歩20分かかるんですが、息子たちには水筒、冷凍ネックリング、冷感タオル、日傘と、フル装備させてます。隣の市では、登校中に解けた冷凍ネックリングを下校までにまた凍らせるため、市が予算を組んで、各公立校に冷凍庫が購入されています。
 
続いて劇に入ります。細かいところで小五郎の「よっ、待ってました大統領!」が「Woo, we've been waiting for you, leading lady.」になっていたこと。
leading ladyは「主演女優、ヒロイン」といった意味だそうですが、言葉のチョイスが現実的すぎるよー
あれは「大統領」という、あの場においては非現実的な言葉で言うからこそ、ジョークとして笑える(と本人は思ってる)んだよ……と思いつつ試しに「待ってました大統領」で検索したら、こんなん出てきた。大統領(ダイトウリョウ)とは? 意味や使い方 – コトバンクより。

だい‐とうりょう〔‐トウリヤウ〕【大統領】

 共和制国家の元首国民直接選挙または議会での選挙などによって選出される。米国などのように行政府首長として強い権限をもつ国もあれば、形式的存在の国もある。
 芝居に出演している役者などに対して、親しみを込めて呼び掛けるときに用いる語。「待ってました、大統領」

まさかの決まり文句だったか。これは私が芝居に詳しくないから知らなかったのか、それとも世代としてすでに古かった(失礼?)のか。
 
そして、この話の最難関の一つ。「この白刃を踏むかのような大胆な犯行が、真実だとしたらね」。
正直、この「白刃を踏む」という慣用句を私は知らなかったので、元々「なんか新一がまたカッコよさげなこと言ってるな」くらいの感想でした。どうも元は「白刃踏むべし」という言葉で、中国の故事からきているようです。意味はまさしく「刃を(素足で?)踏むことができるほどの勇気があること」だそうで。
こちらは「they're walking a razor's edge.Such a daring crime.(彼らはかみそりの刃の上を歩いている。何て大胆な犯行だろう)」。あとのセリフは「If I'm correct about the truth, at least.(少なくとも、僕が真実を導き出せているなら)」でした。
なぜ主語が「They」と複数形なのかがちょっと気になりますが、これはなかなか忠実な訳ですね。翻訳担当の方、「はくじんをふむ」と聞いて意味がわかったのか、それとも原作の「knife's edge」を読まれたのかはわかりませんが、お見事でした。
 
続いてのカッコつけセリフ「祭りの続きは、この血塗られた舞台に幕を下ろした後で」。
吹き替えセリフは「We can continue with the school festival after we successfully bring the curtain down on this murder.
(この殺人の幕を下ろすよう事態を持っていくことに成功した後、学園祭をまた続けられますよ)」。特に問題はないですが、せっかく新一が「血塗られた舞台」とかカッコつけたのに、「this murder」に短縮されちゃったか……無情(笑)。
 
こうして見ると、新一とかキッドとかジンとかの「基本がキザなキャラのセリフ」は翻訳が大変そうだな、と思いました。

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